組織に属していて「何していても無駄だ」というような雰囲気が流れたことはないでしょうか。
その雰囲気の正体こそが学習性無力感というものであり、この感覚はどのような原因で起こるのか、またはどう対策すればよいのか・・・。
そこで、学習性無力感と対策法について紹介します。
学習性無力感って何?
学習性無力感とは「どうせやっても無駄だ」という信念が学習されてしまうことで無気力な状態に陥ってしまうことを指します。
抵抗も回避もできないストレスの渦中にいるうちにその状況に甘んじてしまい、行動をとらなくなってしまうことです。
学問的な面から言うと、人のモチベーションを白湯する期待理論の中の結果期待、随伴性認知の一種にあたるものであり、抑うつ状態のモデルの一つでもあります。
期待した結果と異なる事態が連続して起きる
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そのストレスを受け続けることで人の行動が変わる
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その逃れようのない結果に抗うことは場合によっては命の危険を冒す行動にもつながりうる
その行動を止めるために生まれる無気力感こそ学習性無力感です。
学習性無力感はなぜ現れる?
学習性無力感がどんな状況下で生まれるのかということを、心理学の2つの実験を通して見てみましょう。
一つは道具的課題を人間に与えるための実験で、人間に対しては雑音によって一つはスイッチを押せば雑音が止まる状況と、もう一方は何をしても雑音発生を回避できない状況を作り上げます。
そのように「何をしても結果を変わらない状況下」に置かれ続けると、人は学習性無力感に陥るとされています。
もう一つの実験としては認知的課題を与えるための実験で、数学の問題を使い、片方は答えがある問題を解いてもらい、もう一方には答えがなく、その上解説もない状況に置きます。
そうすると「このような状況だと学習性無力感は得られない」という結果になり、むしろ解決不可能な問いを渡したグループの方が積極性をもって問題解決に挑みました。
この結果から、ストレスを感じる状況が単発的なものであれば学習性無力感は起こらず、むしろ意欲を増して課題解決に取り組んでいくという事例もあるのです。
学習性無力感に陥る理由
ビジネスの世界における学習性無力感に陥るのは、周りの人から繰り返し否定をされ続けた時です。
上記の様に、単発的な否定であればむしろ意欲につながるケースもあるかもしれないですが、否定をされ続けると非随伴性認知が促進されて学習性無力感が出てしまいます。
ほかにも、学習性無力感に陥っている人が周りに多数いる場合も、その無気力感が伝染することによって当事者自身も学習性無力感に陥ってしまいます。
また、部下に対して上司が明確なフィードバックをしないと、部下は自分がした行動がどのような結果や影響をだしたのかということが分からなくなります。
その状況が続けば、その行動に対する期待が低くなってしまうので学習性無力感に苛まれやすいのです。
学習性無力感の事例
具体的な事例としてわかりやすいのは、資格取得のために勉強を続けていたのに一向に成績が伸びず、その資格の勉強から離れていってしまうケース。
これに関しては、「勉強方法の良し悪しや合格点まであと何点だったのか」などという他の状況は関係なく、勉強していた当事者がその結果をどう認知するのかによって発生してしまいます。
また、職場の人間関係でも、ひょんなことがきっかけで同僚や上司から避けられるようになってしまった当事者は、このストレスから逃げ出して仕事をやめるわけにもいかないでしょう。
この過大なストレスを耐え続けるのみになってしまい、学習性無力感が出てしまいます。
加えて、自分がやった仕事に対して何のフィードバックもなく、またその仕事によって会社の状況は何も変わっていないと知れば自分を責めてしまうこともあるかもしれません。
これも学習性無力感の一つです。
学習性無力感はどうやって克服する?
学習性無気力感に陥る人たちは、概ね完璧主義であることがあり、些細な失敗などを抱え込んで自分を責めてしまいがち。
「スモールステップ」という考え方のもと、自分がやった一つ一つの小さな行動に対して即座に自身でフィードバックできるようになれば、学習性無気力感に対抗できます。
また、時には成果の原因を環境のせいにしてしまうことも一つの手。
「もしかすればその結果につながった要因は自分がやったことだけでなく、環境の良しあしが絡んでいたのかもしれない」
「運が悪かったのかもしれない」
というような目線で物事を見ることも必要です。
加えて、自身の服装や身だしなみなどを整えて「自尊心」を高めることによって、学習性無力感を脱出できるかもしれません。
さらに、まわりにいるうまくいっている人、成功している人を見てその人のやり方や考え方に触れながら、自分の考え方を広げることも対策の一つになるでしょう。
学習性無力感について熟知して対策をしよう
学習性無力感は誰しもが陥る可能性のある精神状態であり、仕事をする上でなってしまうと非常に厄介なものです。
まずは学習性無力感について、そういった精神状態になる可能性があるということだけでも知っておくことも非常に大切なことです。
学習性無力感について熟知した上で、陥ってしまっても落ち着いて対処して仕事を成功につなげましょう。
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