パートナーの不倫が発覚して、示談交渉する際に必要になるのが示談書。
テンプレートで作れますが、無効になることもあるため注意が必要です。
そこで、示談書の作成や注意点などについて解説します。
不倫の示談書とは?
この段落では、不倫の示談書とはどういうものなのかを解説します。
双方の合意で約束をするもの
示談とは、争いごとを解決するための話し合いのことであり、当事者が合意する形で解決します。
話し合いによって妥協点を見つけて合意し、和解という決着になります。
示談により合意した内容について書き記したものが示談書。
双方が合意した内容が記載されています。
示談書というタイトルでなくても、合意書、和解書など、内容的に話し合いの結果合意した内容が書かれていれば示談書と呼べます。
トラブルが起こらないようにする方法
話し合いで和解しても、口約束だけでは記憶があいまいになります。
書面に残すことで、何を約束したかを明確にすることができるでしょう
双方の話し合いで合意したことでも、口約束しただけでは第三者にはわかりません。
示談所は、何を約束したかが第三者にもわかる形で残ります。
示談書に書く内容は、和解の段階で合意した内容であり、示談書に書かれている内容については合意済みと解釈されます。
慰謝料などについて記載があれば、支払いの期日や金額が明確になるため、未払いや不正請求の防止となり得る
のです。
不倫の示談書を作成する理由
ここでは、不倫の示談書を作成する意義について解説します。
不貞行為を認めた証拠になる
示談書は、話し合いによって解決した内容について書くものです。
当然何について話し合い、合意に至ったのかということも書かれています。
不倫の示談書には、不貞行為の事実関係を認める項目を入れます。
不倫を行った当人が不貞行為をしたことを認めたうえで初めて成り立つためです。
慰謝料を求めない場合でも示談書の作成は可能です。
慰謝料の有無にかかわらず、当人が不貞行為のあったことを認めた証拠として残せます。
合意内容について覆されない
不倫示談書を作成することは、不倫された側だけでなく、不倫した側にもメリットがあります。
合意内容を明確にしておくことで、後で蒸し返されることがなくなるためです。
不倫示談書には、和解の条件が記載されており、後で和解した内容以上に慰謝料の金額を引き上げられる心配がなくなります。
不倫された側にとっては、合意した慰謝料の金額を合意した期日までに支払ってもらえるでしょう。
示談書にすることで、期日までに所定の慰謝料を支払うという債権と債務の関係が明確になります。
債権者側(不倫された側)が要望すれば、強制執行認諾約款付き公正証書として作成することも可能。
万が一慰謝料の支払いが滞った場合には、訴訟を経ずに強制執行で給与の差押えなどができます。
不倫の再発防止
不貞行為があったことを認めたうえで、二度と関係を持たないことを合意します。
口約束では反故にされる可能性があるでしょう。
不倫関係の解消についての誓約は、不倫の示談書に必ず記載する事項。
拘束力はないですが、一定の抑止力は期待できます。
誓約違反をした際の違約金を設定しておくと、再発の防止策となり得るでしょう。
ただし、不倫した双方に対する再発防止策が必要。
片方だけ示談書で誓約させても、他方に対する対策を怠ると、隠れて不倫関係が継続されてしまう可能性があります。
不倫の示談書の内容とは?
この段落では、不倫の示談書で触れるべき内容について解説します。
不貞行為の事実
不倫に関する話し合いについて作成する示談書は、根本原因は不貞行為です。
不倫の示談書として成立するためには不貞行為があったという事実を認める項目は必要不可欠。
不貞行為の有無に関して曖昧な記載をしたのでは意味がありません。
不貞行為があった事実と共に、不貞行為のあった期間、不倫によってパートナーが受けた苦痛について記載
します。
苦痛に対して誰が誰に謝罪するのかも内容に入れましょう。
裁判に発展した際には不貞行為があった事実が明確に記載されているかどうかが重要になります。
不貞行為があったという事実が明確に記載されていなければ、裁判上の証拠として利用するには弱いです。
不倫関係の解消
不倫関係を解消する旨は必要な項目です。
不貞行為があった事実を認めても、そのまま不倫の状態が続いたのでは示談書を作成する意味がありません。
不倫の示談書には不倫の再発を防止する役割もあります。
関係を断ち切ることを、約束させることが重要。
不倫関係を完全に終わらせる誓約を文面に入れます。
今後一切連絡も接触もしないことを誓わせましょう。
今後連絡や接触をしないという約束
相手が誰であれ不倫は二度としないと誓わせることも大事。
強制はできないですが、抑止にはつながります。
時間が経ってから再び不倫することも防ぎ、都合の良い解釈はできないようにしておきます。
誓約書の内容は示談の相手のみに関わるもので、不倫した配偶者にも同じ誓約をさせる必要があります。
慰謝料の金額と支払期日
慰謝料を請求する場合は、慰謝料を支払う旨を記載します。
いつまでにいくら払うということを記載しましょう。
慰謝料についてあいまいな表現をすると、途中で支払いが途切れることもあります。
慰謝料請求には時効もあるので、金額と期日は明確に示すことが重要です。
公正証書を作成する際の手数料についても、どちらが費用負担するかを記載しておきます。
何に対しての責任が誰にあるのかを文章ではっきりさせておく必要があります。
約束を破った際の罰
示談書に書いた内容について、破った時にはペナルティがあることを記載します。
示談書の中身は破ることが許されないということを強調しましょう。
示談書の各項目が重要な約束事、ペナルティがあることで抑止力がプラスされます。
不倫の示談書は配偶者が被った苦痛に対する訴えでもあります。
配偶者の権利を守る目的があるので、不倫した配偶者と結婚生活を続ける限り有効ですが、離婚した後に不倫相手とよりを戻したとしても、ペナルティは課されません。
これ以上債権や債務は存在しないという約束について記載をしておく、清算事項も設けます。
後で話を蒸し返さないために、示談書に書いた内容で決着がついていることを明確に示しておくことが大事です。
不倫相手にだけ慰謝料請求をしたうえで、不倫したパートナーとは結婚生活を続ける場合は、求償権を放棄するという約束も記載しておいた方が安心です。
本来不倫は共同不法行為なので、慰謝料を支払う義務は双方にあります。
相手から慰謝料の半分を負担するように迫られてトラブルになるのを防ぐためには、求償権を放棄する旨の記載があった方が良いでしょう。
ただし、離婚する場合は不要です。
第三者に口外しないという約束
不倫をされた側も、不倫をした側も不倫をしていたことを話題に持ち出したり、関係者を中傷することがあり得るため、示談書を作成した後も、気持ちが収まらない場合が少なくありません。
第三者に不倫していた事実を知られることは大きな不利益。
不倫していた当人だけでなく、家族までが、不利益を被ることになりかねません。
示談書を作成したことで事態を収束させるためには、第三者への口外を禁止する一文が必要。
平穏な生活に戻すためには不可欠な項目です。
誓約書と示談書の違い
不倫の解消を約束させる文書には、誓約書や念書などもあります。
不倫によって被害を受けた側が不倫をして被害を与えた側に、不倫を解消することを約束させるものです。
誓約書は約束した側の署名や捺印はあるが、書かせた方の署名や捺印はありません。
誓約書によって拘束されるのは誓約書に署名捺印した人だけです。
示談書は双方の話し合いによって合意した内容を記載します。
話し合いをした双方の署名と捺印があるため、署名した全員が内容に従う必要があります。
不倫の示談書の注意点
この段落では、不倫の示談書を作成するうえで注意すべきことについて解説します。
できるだけ明確に記載する
示談書には、話し合いの内容を正確に書く必要があります。
話し合った内容はできるだけ詳細に書き留めておきましょう。
あいまいな記載をすると、人によって都合の良い解釈ができてしまいます。
解釈が異なっていたと言い訳されると、ペナルティを課すことができなくなります。
慰謝料の不払いや、遅延などで裁判を起こしたくても、金額や期日が明確に書かれていなければ、訴えを起こせません。
誰が読んでも同じように解釈できる内容にすることが大事です。
記載する内容を相手任せにしない
パートナーの不倫相手とは会いたくないというのは、被害感情としてあり得ます。
しかし、示談書を作成するには、双方の話し合いが必要。
パートナーと不倫相手との間を完全に終わらせたければ、必要な事項を盛り込んだものにする必要があります。
不倫相手のパートナーに会いたくない場合も同様。
何度も慰謝料の請求をされては困るなら、そのための事項を盛り込む必要があるでしょう。
示談書の記載を相手任せにすると、相手にとって不利な内容(自分にとって有利な内容)が削られてしまう可能性があります。
自分にとって必要な事項を確実に反映させるためにも、示談書に記載する内容を相手任せにしてはいけません。
例文通りに書けない
Web上などで示談書のテンプレートをダウンロードできます。
ただし、不倫の内容はケースバイケースで、テンプレート通りには書けない場合もあります。
不倫相手が不倫であることを知らずにパートナーと関係を持っていた場合には、慰謝料請求はできません。
相手にもパートナーがいるダブル不倫の場合は、関係者が4人になります。
記載すべき事項を漏らさないようにしつつ、テンプレートの内容を実態に合うように変更する必要があります。
テンプレートはあくまでも参考としてとらえることが大事です。
公序良俗に反する内容は書かない
公序良俗に反するとは、公の秩序又は善良の風俗に反するという意味です。
公の秩序とは国や自治体が決めた法令や条例などのこと、善良の風俗とは世間一般の常識、風習、道徳などのこと。
法律では判断できないことでも、世間一般には認められない、道徳的に問題があると考えられることは公序良俗に反するものと判断されます。
慰謝料の金額が不当に高い場合や、人権侵害に当たるような記載は公序良俗に反することに当たります。
全体的な合意事項が公序良俗に反していなくても、誓約を破った際のペナルティが公序良俗に反した内容になってしまうことはあり得るのです。
万が一に備えたことであっても、現実的にペナルティとして相応しい内容にとどめる必要があります。
内容を漏らさないようにする
示談書に盛り込む内容は過不足なく記載することが大事。
不貞行為があったことを認めたうえで、再発防止のために取るべき事項について記載して初めて示談書としての意味を成します。
話し合う時点で、示談書に記載が必要なことは漏らさないようにしておきましょう。
約束すべき事項が漏れていると、示談書として中途半端な内容になってしまいます。
実際に話し合っていない内容をプラスして記載してはなりません。
漏れているかどうかだけでなく、余分なことを書いていないかという点もポイントです。
示談書が無効になってしまうケース
自分たちの意思で合意したことを確認するため当事者双方の署名捺印が必要です。
署名と捺印のいずれか一方でもあれば有効となるが、どちらもない場合は無効。
誰と誰が合意したかが立証できないためです。
原則、当事者同士が話し合いによって合意した内容は有効です。
一度合意した慰謝料を、相場よりも高いから安くしろという話は通りません。
ただし、公序良俗に反する内容が記載されている場合は、当事者間では合意していても無効になります。
慰謝料の金額が、被害の程度に対して常識では考えられないほど高い場合は、たとえ当事者間で合意していても無効です。
効力のある示談書を作ろう
せっかく不倫の示談書を作成するなら、不倫された側が不利になるようなことのないように注意し、法的にも有効な示談書にしましょう。